せたログ

主に自転車の旅について,不定期投稿します

厳冬期北海道一人旅part7

「ここはどこだろう」

暖かな布団,ふかふかの枕,適温に保たれた部屋,遠くから朝ごはんのかすかな香り.

何だろうか,この実家のような安心感は!

寒さや吹雪で目覚めることも,共用施設の一部を寝床として使わせていただく罪悪感もなく,ぐっすり眠れました.

寝坊から始まる厳冬期北海道一人旅,7日目の朝です.

プレゼント

寝坊したせいで朝日は高く昇ってしまい,予定していた日の出の撮影はできませんでしたが,昨日までの疲れはしっかりとれました.

電子機器の充電も十分です.

ラスト・ランに向けて準備万端.

念のため余分に買っておいたけれど使わなかったプリムスのガス缶は「次にやってきた旅人に渡してください」と民宿えびすやの奥さんに預けました.

缶類は帰りの飛行機に持ち込めないので,空港で捨てるよりも誰かに使ってもらう方がいい.

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出発しようとする私に,えびすやの奥さんは「ちょっと待ってね」と手編みの手袋をくれました.

「暖かくして,気を付けていってらっしゃい」と笑顔で見送ってもらい,最後の1日が始まります.

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民宿えびすや,ご飯も風呂も布団も最高な宿でした.

いつかまた.

日本本土四極制覇へ

最東端は約25km先.

納沙布岬に辿り着けば,日本本土の東西南北の端っこ全てに自転車で到達したことになります.

まだ見ぬこの旅の終着地点に胸が高鳴ります.

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毛糸の手袋,とてもあたたかい.

いつものように氷点下ですが,聞いていたほど風は強くないようです.

明日以降は猛吹雪の予報.嵐の前の静けさというやつでしょうか.

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手袋と一緒にお菓子までたくさんいただきました.

走りながらお菓子を食べつつ.

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最東端のセコマで買ったアイスを食べつつ進みます.

なんとこのアイス,ちんたら食べても溶けないんです!(当たり前)

大荷物を積んで走り火照った体に,冷たいアイスと氷点下の風が心地良い.

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交通量は少なく,路上の積雪もなく,とても走りやすい.

それでもいつ地吹雪が起きて立ち往生するか分からないので,常に警戒しながら走ります.

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最東端の郵便局.

この辺りでは全てのものに「最東端の」という接頭語がつけられそうです.

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最東端の風車.

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海の向こうには蜃気楼で大陸が出来上がっていました.

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岬に立つオーロラタワーが見えてきました.

納沙布岬はすぐそこです.

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「旅が終わってしまう」

そう思うと途端に淋しくなります.

朝晩は指が悴んで痛いし,夜は寝床に神経を遣うし,積雪の悪路に高速走行する車両は怖いし,不安に怯える毎日.

撮りたいだけ写真を撮り,その日に走れるだけ走り,何度も絶景を目の当たりにし,立ち寄った地の食堂やセコマやセコマやセコマで美味しいものをたらふく食べる,誰にも気を遣わなくて良い自由を謳歌した毎日.

ひとりぼっちで心細く,命の保証のない夜も越えながらも,今日明日何が起こるか分からないワクワクと自由だけを携えて走ってきました.

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「ああ,もう終わってしまうのか.」

最東端到達直後,達成感や歓喜より先に待っていたのは,この旅の終わりを惜しむ淋しさでした.

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この先っちょの左がオホーツク海,右が太平洋.

北方領土歯舞諸島のうち1つ「水晶島」が海の奥に見えます.

随分と遠くまで来たのだなと,今まで影を潜めていた達成感がじわじわとこみあげてきます.

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これにて日本本土四極制覇です!

閉店観光 in 納沙布岬

腹が減ったので,予めツーリングマップルで目星を付けていた最東端の鈴木食堂でさんま丼を.

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「ほ...ほう...?」

やってくれるじゃないか納沙布岬

(さんま丼を食べたいだけの人生でした.)

飯がだめなら観光を.

折角なので北方領土を上から眺めるべく,オーロラタワーへ.

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まあ,そんな日もありますよね.

次です,次.

ここ数年はステッカー集めにお熱なので,最東端ステッカーさえ買えれば良しです.

自転車のサイドバッグを彩るステッカーは見つかるでしょうか.

お土産屋さんへ.

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気分次第で閉店なさってました.

これでもかという自由っぷりに笑えてきてしまいます.

閉店3コンボ!

終業時間「その日の気分次第」.いいなあ.

ラスト・ラン

さんま丼は食べられませんでしたが,近くで開いていた「東灯」さんにて昆布ラーメンをいただきました.

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ラーメンというよりはうどんのダシに近い感じ.とても味わい深くてあたたかくておいしかった.

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ステッカーはとり逃しましたが,岬の公園内にある「北方館」にて最東端到達証明書を入手.

これにて日本本土四極踏破を証明できるモノが揃いました.

(ああ...ステッカー...)

思い残すことなく納沙布岬をあとにします.

ステッカーはまた次に到達した時にでも回収します.

さんま丼も食べ逃したので,きっとまた来ることになるでしょう.

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結氷したトーサムポロ沼.

相変わらず不思議で美しい景色が広がっています.

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大鷲に見送られて,納沙布をあとにします.

根室市街に戻り,名物のエスカロップをたべ,初のバス輪行で札幌へ向かいます.

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帰還

旅をすると,人のやさしさ・あたたかさが普段以上に身に沁みます.

「どうにか自分だけの力で」と一人で旅をしてみても,他の誰かとの繋がり感じずにはいられない.

結局のところ人は,人との繋がりの中でしか生きていけない生き物なのだと思います.

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旅の途中,運よく猛吹雪には遭遇しませんでしたが,私が自転車を降りたあとにやってきた爆弾低気圧が北海道全土を襲いました.

この猛吹雪で男性一名が命を落としています.

「この旅に命を懸ける覚悟はあるか?命を懸ける価値はあるか?」

北海道一日目に美瑛で出会ったTさんからのこの問いかけ.

確かに一生の思い出に残るような旅でした.それだけの価値がありました.だけれど,生きていればこそです.

他人事ではないニュースを見たあとに,軽率にYESと答えることはできません.

彼が私を止めようとしてくださった時の気持ちが少しわかった気がします.

このたった数日間のうちにたくさんの選択をしてここまで辿り着きました.

初の厳冬期北海道で一人,生きて無事に旅を終えられたのは他でもなく,旅先で出会った人々のお蔭でした.

夜行バスの中で生存報告と感謝を込めてTさんにメールを送り,翌々日の飛行機で九州へ.

新千歳空港は吹雪で一面真っ白.

殆どの便が強風と雪で欠航となる中,SKYMARKだけが1時間ほど滑走路で粘り,離陸してくれました.

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吹雪を抜けた飛行機の窓から見えた雲海と青空が,最初に見た美瑛の丘を思い出させてくれます.

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こんな真っ白な大地をずっと走ってきたんだ.

それももう随分昔のことのように思えます.

遠ざかってゆく北の大地に思いを馳せながら,ずっと雲の上に広がる雪原を眺めていました.

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雲の上からの素晴らしい夕暮れと共に,今回の旅は幕を閉じました.

次はどこへ行こうか.

学生生活は戻ってきませんが,また心躍る旅に出たいものです.

厳冬期北海道一人旅・おわり