せたログ

主に自転車の旅について,不定期投稿します

年末年始紀伊半島一人旅part6

無事に釈迦ヶ岳のご来光登山を終えた翌日。

久しぶりに自転車ツアーの醍醐味を味わうこととなる。

熊野をゆく

食料が尽きお店もないので、朝食は非常食のアルファ米となった。

沸かしたお湯を入れて封をして15分、放置しておくだけでご飯のできあがり。

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アルファ米は多めに持ってきているので、何かあっても水さえあればあと1日はどうにかなる。

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道の駅の端にひっそりと張らせていただいていたテントを撤収。

今日は本州最南端の潮岬を目指す。

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静かな朝。

風が気持ちいい。

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熊野川沿いの道をゆったりと下ってゆく。

ツーリングマップルに書いてあったとおり、この国道168号は快走路だ。

世界遺産熊野本宮大社

大峯奥駈道に続き、紀伊山地の霊場と参詣道の一部として世界遺産に登録されている熊野本宮に到着。

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1月2日ということで初詣の参拝客はまだまだ多く、近くの道は渋滞していた。

参拝するにも30分以上行列に並ばなければならないほど混雑していた。

なんとか初詣を済ませおみくじを引く。

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なんともいえぬ末吉....

恋愛「あきらめなさい」

そんな決めつけなくてもいいじゃない、神様。

街へ

熊野本宮の近くには高さ34mと日本一の大鳥居があるとのこと。

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規格外に大きい。大きすぎて遠近感が分からなくなる。

記念に少しだけ写真を撮り、街へ急ぐ。

今日は頑張ればなんとか本州最南端の潮岬まで辿り着けそう。

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熊野川ブルー(勝手に名付けた)を左手に快走。

陽が射す度に川の青が更に深くなって美しい。

熊野本宮と熊野速玉を繋ぐこの流域もまた、世界遺産の一部として登録されているらしい。

川沿いを走り続け、4日ぶりに街へ出た。

自転車ツアーの醍醐味

自転車の旅は甘い汁ばかりを啜らせてはくれない。

絶景や快走路の前後には何かしらの苦難が待ち受けている(経験則)。

今回も例に漏れず、ハードモードに突入する。

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4日ぶりのコンビニにテンションが上がる。

おにぎりが美味しい。文明よありがとう...ありがとう...

潮岬に向けて、ここはひとつ気合を入れようとモンエナを1本。

エナジーをチャージしていると、旅先でよく出会う”どこから来たのおじさん”に声を掛けられた。

(説明しよう。”どこから来たのおじさん”とは、輪行準備中や休憩中に声を掛けてくる地元のおじさんのことである。第一声は勿論「どこから来たの?」)

おじさん「どこから来たの?(以下略)自転車はパンクしたりしないんか?

私「このタイヤ、余程のことがない限りパンクしないんですよ。パンクしてもチューブ持ってきてるから修理すればいいだけなので、あまり心配はしてないです。」

察しの良い方はもうお気づきだろう。

見事、フラグを建ててしまったのである。

1級フラグ建築士

フラグを建ててからまだ5kmも走っていない。

陽が傾き始めている。急がなければならない。

トンネルの先には今日の温泉がある。

トンネルは軽車両通行禁止となっており、迂回路が用意してあったので人気のない脇道へまわる。

ガタン、ガタン

何の音だろうか。多分気のせいだ。

ガタン、ガタン、ガタン

自転車がいやに騒がしいな。

ガタン ガタン ガタン ガタン

明らかに何かが挟まった音がしている。

木の枝がたくさん落ちているような道だったし、スポークの間に何か挟まってしまったのだろう。

温泉まであと100mほどのところで停止する。

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あっ...パンクしないと言ったそばから...

先ほどチャージしたばかりのエナジーは、パンク修理に注がれるんですね。

パンクしてしまったものは仕方がない。

さっさと釘を引っこ抜いてチューブを交換するのみだ。

タイヤの穴はどうにかして塞ごう。

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予想以上にでっかい釘だった。

さてさて、チューブを。

(適合しない規格のチューブを発見)

やってしまった...

チューブ持ってきてるから修理すればいいだけと言ったそばから...

何かと立て込んでいた年末はルート作成する余裕もなく、新幹線の中で旅程を決めるドタバタっぷりだった。

荷物をまとめる時にチューブの1つや2つ、間違えていても仕方がない。

(ちゃんと確認しましょう)

心配して用意周到に準備した時には何も起こらず、準備を怠った時に限ってトラブルは起きる。

人生そんなもんです。

しかし、悪夢はここで終わってはくれなかった。

ゴムのり出てこんやん

あとはタイヤパッチで穴を塞いで修理する他なかった。

しかし、ゴムのりは一向に出てこない。

なんと、最後の望みであるゴムのりは硬化していた!!!

(ちゃんと確認しましょう)

非常に困った。

近くに自転車屋さんや駅はない。

1時間かけて駅まで歩き、街まで電車で戻ったところで正月3ヶ日の夕方に自転車屋さんが店を開けている望みは薄い。

ここは工夫を凝らしてタイヤの穴を塞ぐしかなさそうだ。

手元にあるものでなんとかできないだろうか。

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ライターでパッチを炙り、チューブに溶着させる作戦

自転車乗りとして恥ずかしい限りだが、立ち止まったままでは何処へも行けないので、思いついたことはとりあえずやってみるしかない。

少し煙が出るくらいまでパッチを炙るとタイヤにくっつくようになった。

これはいけるかも。

炙って柔らかくなったパッチをライターのお尻でチューブに押し付ける。

パッチが冷めると縮んで隙間ができるので空気が漏れてしまう。

まだまだ。もう一回...もう一回...

気付いたら日はすっかり暮れて、辺りは暗くなっていた。

指は溶けたゴムで真っ黒になっていた。

長期戦になりそうだ。

とりあえず目の前の温泉に入ってから再度挑戦することにした。

願事:積極的な考え方をすれば叶う

今年の目標は本州4端踏破。

だから今回の旅では最南端の潮岬にどうしても辿り着いておきたかった。

パンク修理ができなかったら...

その時は潮岬まで30km、自転車を押し歩くしかない。

今日引いたおみくじにも「積極的な考え方をすれば叶う」と書いてあった。

諦めてやるわけにはいかない。

温泉の受付にて、近くでご飯を食べれる所を訊いたが無いとのこと。

パンクが修理できるまで晩飯は食べれそうにない。

再びパッチを炙っては押し付ける。

1時間..2時間...

馬鹿馬鹿しいけれど、手持ちのものではこの他もうどうすることもできなかった。

午後10時、気温-2℃。

ハードシェルには霜が降りていた。

寒いし心細い。こんな馬鹿馬鹿しいことを6時間程やっている。

いつまで戦えばよいのだろう。

心が折れかけているところに、電飾がついたシャコタンのバンがやってきた。

「(こんな状況でヤンキーな方に絡まれるのか...?)」

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「温泉の受付で聞いてたんですよ。晩ごはん食べてないんだろうなって。

さっき通りかかったらまだ修理やってたから。これ食べてね。」

今、人にやさしくされたら泣いちゃうぞ?

風邪気味で鼻水がずびずびだけど、目からも汁が止まらなくなっちゃうぞ?

去ってゆくバンが見えなくなるまで頭を下げていた。

悴む手と湯冷めした体に、あたたかいお茶と肉まんが沁みる。

本当にありがたかった。


その後また作業を続けたが、チューブの穴は一向に塞がらなかった。

午後11時半。

これ以上続けても体力が削られるだけだと判断し、明日は30km歩こうと決めた頃だった。

温泉の駐車場で誰かと話し込んでいた別の方に声を掛けられた。

事情を話すと彼はこう言った。

「明日暇だから、新宮の街まで連れったげるよ。温泉の人にはここの駐車場で寝ていいって許可もらってる。テントは持ってるだろうから、今日はもう寝な。明日朝から迎えにくるから。何時がいい?」

氷点下の屋外で寝ることを勧めてくるあたり、旅慣れしているか同じような経験がある方なのだろう。

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自転車はパンクしたまま。

駐車場の端の邪魔にならないところへ移動させ、テントを張った。

自分のミスで苦しみ、名も知らぬ方の優しさに助けられてしまった1日だった。

つづく。