せたログ

主に自転車の旅について,不定期投稿します

GW東北一人旅day02

山形県鶴岡市に住む友人宅で目が覚める。

2019年4月27日。東北ツーリング2日目の朝だ。

続・悪天候ライド

朝から雨風ひどかった。

昨日より天候が悪化している。寒い。

どうしても走る気持ちにはなれない。

輪行するかなあ、でも甘えたくはないよなあと悩みながらスマホを眺める。

秋田駅前の東横インを予約した。

どう考えてもしっかり濡れて凍える1日になるのだから、あたたかいところで眠りたいし、ギアは広げて乾かしておきたい。

高くついたが仕方がない。秋田市まで走って屋根のあるところで眠る。

あわよくば美味しい地酒をいただく。きりたんぽも食べたい。

それだけが今日のモチベーションなのだ。

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レインウェアを着て、友人に道案内してもらって走り出す。

気温1桁の雨は体にも精神にもくるものがある。

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向かい風、横殴りの雨、こごえる体。私はどうして走ってるんだろう。

シーサイドツーリングってこんなにつらかったっけ。

遮るものがないから風が容赦なく吹き付ける。

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グローブも中まで水が染みてしまい冷たいだけなので、外してしまった。

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せめてもの観光に、酒田市の山居倉庫。

趣のある倉庫群と木製の橋が良い雰囲気だった。

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雨は降ったり止んだりしながら、じわじわと体力を奪う。

強い向かい風がずっと吹いている。

秋田市はまだ遥か彼方。心が折れそうになる。

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青看板に青森県を捉えた。

まだまだ先だけれど、着実に北へ進んでいる。

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お昼は道の駅鳥海にて牡蠣丼。

あたたかいご飯が何よりおいしかった。

今日は何も見えないが、晴れていればたっぷりと雪を蓄えた独立峰鳥海山が見えたのだろう。

秋田県

国道7号線をひたすら北上してゆくと、秋田県に入った。

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このあたりは桜の花びらが散って、葉桜の季節らしい。

もっと北上していけば、満開の桜に出会えそうだ。

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由利本荘の市街を抜けたら、あとはずっと日本海を臨む一本道。

「晴れていれば」という思いは拭えないが、十分良い景色だ。

雨は次第にあがってゆく。

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荒涼とした風景が延々と続く。

冬場の日本海はずっとこんな天気なのだろうか。

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夕暮れにようやく太陽がほんの少しだけ顔を見せてくれた。

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夕陽を拝んだ海辺に、ひっそりと日本ロケット発祥記念之碑があった。

今から約65年前にこの地で日本最初のペンシルロケットが高度600mまで飛び立ったらしい。

空への浪漫が詰まった場所だ。

ja.wikipedia.org

明日に少しだけの希望を託してあとはナイトラン。

秋田駅に到着したのはすっかり日が暮れて暗くなった20時ごろだった。

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体は冷え切って震えていた。

酒を飲みたい。とびきり美味い酒を。

かまどやという居酒屋へきりたんぽを求めてゆく。

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今日も悪天候の中、よく走った。

お疲れ様と自分の体を労う。酒が美味いなあ。

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蛇口から日本酒がでてくる珍しいお店だった。

夢がある。幸せだ。諦めずに走ってきてよかった。

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夜はびしょ濡れのギアを床に広げて乾かし、風呂場で服を洗って乾燥機にかけた。

素手で洗濯物を思い切り絞っていたら指の皮がむけた。

明日からようやく晴れるらしい。なまはげ求めて男鹿半島へ。

3日目へつづく

GW東北一人旅day01

「もっと遠くへ行かなければ」

大学を卒業した後もずっと、そんな思いに駆り立てられていた。

2019年のGWは平成から令和への改元で10連休となった。

長期ツーリングをするのならここを逃すわけにはいかない。

東北地方は学生時代に一切走らなかったし、走ろうという話があがったこともなかった。

近場の九州、定番の北海道やしまなみ海道、乗鞍や富士山はサイクリング部時代に走ったが、東北は九州からのアクセスが悪い。

18きっぷで行くには時間がかかりすぎてつらいし、航空券は安くない。

だけど、今行かなければ、もう走れないかもしれない。

10連休に会社の有休を+2して、奇跡の12連休が錬成された。

1か月のうちほぼ半分が休みだ(勿論、旅の後は残業地獄になった)

航空券をとって、身支度をした。

5度目の一人旅。今回はどんな景色に出会えるだろうか。

新潟へ

旅のプランは福岡空港から新潟空港へ飛行機輪行

そのまま時計回りに海岸線をぐるっと走って仙台空港へ。

外せないのは本州最北端の大間岬・最東端のトドヶ崎。

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約1000-1500kmの旅程になるだろうとは考えていたが、計画は厳密には決めていない。

往々にして厳密な計画は想定外の出来事によって綻びが生じ、下方修正を強いられる。

そんなことでストレスを溜めても仕方がないので、

ざっくりと「このへんで寝れそう」「このへんで風呂に入れそう」「このへんで飯が食えそう」

くらいをBプランCプランくらいまで選べる状態にしておけば十分だ。

それでもどうしようもなくなったら輪行すればいい。

初日は始発で福岡空港へ向かう。

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今回は平均120km/日くらいの旅になりそうなので、相棒はロードバイクであるRIDREY FENIX ALにした。

ツーリングスタイルはバイクパッキングに決め、着替えやテントやシュラフをフレームに積み込む。

アドベンチャーバイクやクロスバイクと比べるとかなり軽い。

輪行も楽だ。

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自転車の旅で最もワクワクするのは、駅のホームで始発の電車を待っているときだろう。

鉄の塊はこれまで知らなかった世界へ体を運んでくれる。

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新潟行きの飛行機は小型のプロペラ機だった。

大きな飛行機と比べるとなんとなく心許なかったが、プロペラは力強く回りだし、空へ飛び立った。

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初日はあいにくの曇天、予報では新潟はそこそこ雨が降っているらしい。

出発

新潟空港に降り立ち、自転車を組み立てる。

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あ、、エンド金具が仕事しとらん。。。

もしディレーラーが逝っていたら、初日はこれで終わる。

ビクビクしながらホイールをはめて荷物をまとめる。

なんとかギアチェンジはうまくいくようだ。よかった。

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2019年4月26日。

AM 11:00 新潟空港は雨。

どうやら初日から試されているらしい。GWとはいえ雨の日の東北は寒い。

今日は山形の鶴岡市に住む友人宅まで行く約束をしている。

走ろうか輪行しようかツーリングマップルを眺めながら考えていたが、

この雨では空港から新潟駅までの数キロを走っているうちに濡れてしまうので、

もう走ってしまえという気持ちになった。

ビンディングシューズに履き替えて、北へ向けて出発する。

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雨はしっかり降っていて、2分も経たないうちに靴は水を含んで重くなった。

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予想以上に寒いし、海は灰色だし、楽しくない。

だけど、進むしかない。

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海岸線をゆく国道345号。アップダウンは少ないものの、風力発電が一列に並んでいたり黒松の林が突然現れたり飽きない道だ。

晴れていれば楽しいシーサイドサイクリングだったに違いない。

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親鸞とパンク

雨に耐えながら走っていると何やら巨大な像が見えた。

親鸞の像らしい。人っ気がないので観光地ではないようだ。

まともな写真を撮っていないので、とりあえず記念に1枚だけ撮っておく。

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雨脚は弱まる気配がない。

レインウェアは着ているものの、数時間雨にうたれれば染みてくる。

濡れた体は冷えて、手がずっと震えている。

淡々とペダルを漕いでいると、前輪から「プシュー」という音がして、一気に空気が抜けた。

注意が散漫になり、ガラス片を踏んだらしい。前輪は完全に潰れ、タイヤはしっかり破れていた。

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自転車を押し歩く。なんて日だ。

あのトンネルまで歩いて、雨を凌いでタイヤとチューブを交換しよう。

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予備にと持ってきていた交換タイヤは初日から使ってしまった。

チューブはまだあと2本ある。

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震える手で修理していると女性が歩いてきて「旅のお方..」と声を掛けられた。

優しい地元住民の方だろうか。心が折れかけているので、人と話せるだけでも気が楽になるというものだ。

記念すべき第一町人。いったい何の話をするのだろう。

謎の女性親鸞様って知っていますか?」

ダメだ...宗教勧誘だ...。今日という日はどうしてこんなにツイていないんだろう。

親鸞って、この道のちょっと手前の方にあったでっかい大仏ですよね?」

「???」

なぜピンとこないんだ。勧誘したいんだろう?近所なんだからそれくらい抑えておきなさいよ。

「うちの仏間に祀ってある親鸞様に手を合わせれば幸せになれるんですよ」

あからさますぎる。もっとましな誘い方はなかったのだろうか。

そんなんじゃ誰も捕まらないよ、と思いながら適当に断りタイヤとチューブの交換を続けた。

東北地方へ

体は完全に冷えてしまった。

がたがた震えながら雨の中を再出発する。

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山形県に突入する頃にはもう暗くなってきていた。

ようやく東北地方だ。

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雨脚は強まるばかりだ。

鶴岡で飯の約束もあることだし、真っ暗になってしまったので、目的地まで残り30kmを残して輪行することにした。

修行しに来ているわけではないのだ。辛くなったら趣味ではない。

駅で本数の少ない列車を待ちながら友人に輪行する旨を伝えると、車で迎えに来てくれるという。

輪行袋に入れた自転車を車に積み、助手席に載せてもらった。

車の暖房があたたかかった。

長い長い12連休。まだ旅は始まったばかりだ。

2日目へつづく

国東半島一周旅day02

旅館にて起床。

今日は国東半島国見から時計周りにスタート地点を目指す。

旧隧道

国東半島の北半分くらいはリアス式海岸となっており、アップダウンとトンネルが続く。

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トンネルは国道213号線上にある比較的新しいものと、その隣に使われなくなった(一部現在も使われている?)旧トンネルが存在している箇所がある。

国道の隣にかなり淋しい雰囲気を醸し出している隧道が口を開けていたので入ってみることにした。

松ヶ尾隧道。

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新トンネルがきれいで整備されているため、車は殆どこちらを通ることがないようだ。

中に入ってみると、空気がひんやりとして重い。

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そして、素掘りのトンネルであることに気づく。

いつの時代に掘られたのだろうか。

トンネルの下の方は崩落が進んでいるようだ。

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トンネル中ごろまでくると、外からの光はまともに入ってこなくなる。

見えるのはトンネル出口の微かな明かりと自転車のライトの灯りのみ。

真っ暗闇の中でコウモリがキィキィと鳴いていて、異様な雰囲気だった。

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他にも幾つか国道脇に旧トンネルがあったが、崩落しているのか入口が塞がれているところが多かった。

ここもいずれは通れなくなるのかもしれない。

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予期しない景色に出会えるから、寄り道はやめられない。

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海沿いのサイクリング専用道

トンネル区間を抜けると、サイクリングロードが現れる。

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幅もたっぷりで自転車専用に整備された路肩。

海風が気持ちいいし、車にびくびくしなくてよいのでとても走りやすい。

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とはいえずっと専用の整備道であるわけではなく、標識の指示に従い裏道を経由する箇所もある。

「本当にこっちで合ってるのかな」と思いながら海藻が干してある海辺の道の脇を通り抜けたりもした。

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サイクリングロード途中の道の駅くにさきは、補給のない自転車道のオアシススポットだった。

併設の「銀たちの郷」にて太刀重を注文。

これがまた美味しい。

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ちゃっかりお土産も購入。

お腹を満たして荷物を増やして最後の坂道へ。

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さらば仁王輪道

1日目の朝に1体見つけていただけの仁王像。

ようやく2体目に出会えた。

半島内にはもっとたくさんいるはずだけれど、他のは内陸部にいるのだろうか。

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杵築を走り抜け、標高450mほどの坂を登ればゴール。

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2日間で150km弱のゆったりプランにて、国東半島一周の旅は終了。

ひどく疲れることもなく、サイクリングをゆったりと楽しめた春の週末となった。

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次は内陸部を走りに行かなければ。

おわり。

国東半島一周旅day01

「なんでもない週末に旅しよう」

そう思い立ったのが3月の上旬、冬の寒さが和らぎ微かに春の気配を感じる頃だった。

なるべく気負わず気楽に出発したい。それならば九州内だろう。どこにしようか。

なんとなく探しているとこのWebサイトを発見した。

kunisakicycle.jp

大分県の国東半島にサイクリングルートができたらしい。

過去に九州一周した時にはショートカットして通らなかった国東半島。

よし、桜が咲いたら走りに行こう。

国東半島へ

4月最初の土曜日、午前5時。

佐賀から高速をとばして大分を目指す。

ルーフキャリア初導入で心配はあったが杞憂だった。

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たった2時間でスタート地点に到着。近場は楽だ。

今回は自動車輪行のため、スタートとゴールを同じ場所にする必要があった。

あらかじめサーチしていた高台の展望台に車を停め自転車の準備をする。

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朝イチから絶景!

由布岳が美しい。早起きは3文の得とはまさにこのこと。

坂を少し下ると国東半島のサイクリングルート「仁王輪道」の半島一周コース(全長約140km)に合流する。

この半島一周コースを2日かけてゆったりと走る計画だ。

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早速、仁王像が出迎えてくれた。強そう。

仁王輪道の名は、半島内に300体以上ある石造仁王像にちなんで名づけられたらしい。

2日間で何体くらい見れるだろうか。

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山間を抜け、豊後高田市街に入る。

レトロなお店が立ち並ぶ商店街「昭和の町」で見つけた喫茶店伯剌西爾(ブラジル)珈琲にぶらりと立ち寄り、早めのお昼をとる。

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マスターは気さくな方で、西欧の珍しいグラスをいくつも見せてくれた。

真上から見ると万華鏡のように見えるこのグラスは7万円もするらしい。

そのうえ「好きなグラス選んで、ジュース注ぎますから」とまで言ってくれた。

ギターの生演奏に「りんごの唄」をリクエストし昭和の旋律を楽しみながら、ぶどうジュースをいただく。

ああ、美味しい。そして昔祖母がよく歌っていた懐かしの旋律が心地よい。

自転車旅をしているのにこのゆったり感はなんだ...

自分を追い込むような旅ばかりやってると寿命が縮むので、たまにはこういうのやっても罰はあたらないでしょう。

春の赤青黄

海沿いに出る。ここからはシーサイドツーリング。

全身で春を味わうことになる。

:真珠海岸、消防団

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:粟島公園、菜の花畑

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:粟島公園、鳥居と桜

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国東半島がこんなにカラフルだなんて。侮っていた。

この景色、すべて約1時間の間に目にしたもの。絶景が凝縮されている。

真珠海岸・粟島神社を満喫したら長崎鼻に寄り道。

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道路の両側に広がる菜の花畑に圧倒される。

時間が経つのも忘れて夢中でシャッターを切っていた。

宿へ

1日に70kmのライトプランなだけに疲れが見える前に目的地に到着。

旅館にチェックインしたけれど、まだ日も高い。

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道の駅くにみまで少しだけ足をのばし、大分産のかぼすジュースを楽しむ。

ご当地ジュースは必ず嗜むのがポリシー。

ひとしきりあてもなく近辺をぶらぶらして宿へ戻る。

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くず

案内された部屋名にディスられた気がした、つらい。

自転車の旅といえば道の駅にテントが8割くらいのイメージだから、畳の部屋で横になれるだけで幸せすぎて昇天。

しかもまだ明るい時間帯に。贅沢すぎる。

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夕食は懐石料理と地酒に舌鼓。

国東半島、いいぞ。(就寝)

day02につづく

年末年始紀伊半島一人旅part7

パンクのフラグを見事回収し、チューブを交換することもパッチで穴を塞ぐこともできないまま朝がきた。

山から下りてきた筈なのに-2℃の朝。

ここは温泉の駐車場。かなり冷え込んでいる。

自転車とテントにはしっかりと霜がおりていた。

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目の前の湖からは湯気があがっていた。

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テントを片付け

「明日朝迎えに来るから」と言ってくれたおっちゃんを待つ。

今夜どこに辿り着けるのか見当もつかない。

おっちゃんと白バン

朝7時きっかりにおっちゃんは駐車場へやってきた。

「これ、朝飯」という言葉とともにサンドイッチとコーヒーが手渡される。

何から何まで良くしてもらって申し訳ない。

でっかい白バンに自転車と荷物を積み込む。

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バンには大量の荷物が積まれていた。

新宮市方面へ戻りながら自転車屋を探す。

まだ1月3日の朝。

どの店も開いてはいなかった。

定住せずに国内外で自営業をやっていたという彼の話をききながら車はゆく。

いろんなことをやってみて、飽きたら全く別のことをやって生計を立てているらしい。

若いころは海外、ここ10年はみかん農家、そろそろルーチン化して飽きてきたので次は釣りだという。

サラリーマンも悪くはないけど、こういう生き方も魅力的だ。(やるとは言っていない)

いろんな人がいておもしろい。

・・・

適合するタイヤもチューブも置いている店がなかったので、イオンの自転車屋でパンク修理キットを購入。

タイヤに空いた穴は、ガムテープをタイヤパッチ代わりにして塞ぐことにした。

ガムテープもイオンで購入しようとすると彼に止められた。

「このあと会う釣り仲間でガムテープに強いこだわりあるのがいるから。オカモトの高級ガムテープくれるはずだよ。」

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オカモトといえばゴムのオカモト。

安心と信頼のオカモト。

ガムテープも作っているとは知らなかった。

穴が開くことはないはず。

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これで大丈夫だろう。

チューブの穴もパッチで塞いで自転車は見事復活。

修理したタイヤとチューブを負荷がかかりにくい前輪に移し替えて作業完了。

お世話になったおっちゃんが釣りに行くのを見送り、潮岬に向けて出発する。

ラストランは2人で

昼食をとり、再び走り始める。

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捕鯨云々で話題となった太地町を抜け、本州最南端町串本に入る。

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だんだんと最果て感がでてきた。

端っこ好きには堪らない。

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道中で別の旅人と出会った。

台湾人のサラリーマンの方で、長期休暇に一人でツーリングしているとのことだった。

なんとなく同じ匂いがする。

「一緒に走ろう」と声を掛けられたので、潮岬まで一緒に行くことにした。

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彼は基本ゲストハウス泊らしく、かなり身軽だ。

坂道ではどんどん離されてしまう。

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片や私は、パンパンのサイドバッグにシュラフバックパックにとてんこ盛りだ。

あとからLINEで送られてきた後ろ姿の大荷物っぷりが笑えた。

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潮岬到着。一人旅のゴールは二人で。

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本州最南端から夕陽を眺める。

台湾の彼は市街のゲストハウスへ行くらしく、ここでお別れとなった。

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私は今夜の流星群に期待して、潮岬でキャンプすることにした。

潮岬、しぶんぎ座流星群の夜

戦利品のステッカーと到達証明書を入手できて満足。

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今夜はしぶんぎ座流星群極大。

快晴かつ月明りもなく、観測日和。

先の旅人から「ゲストハウスに泊まりにおいでよ」とLINEがあったが、こんな日に外で寝ないのは勿体ないからと断ってしまった。

星景写真撮影に備えて、さっさとテントを張る。

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1時間ほどシャッターを切り続けたがなかなか流れない。

朝方の方がよく流れるとの情報だったので、一旦寝ることに。

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朝の3時頃に起床し、真っ暗な潮岬周辺をカメラ片手に彷徨う。

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地球照を纏った細い月がのぼってきた。

気まぐれに場所を変えながらシャッターを切る。

数は少なかったけれど、流星を捉えることができた。

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旅の終わり

夜があけてゆく。

あっという間の6日間だった。

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細い月が白んだ空へ溶けてゆくと、あとを追うように日が昇り、新しい1日が始まった。

荷物をまとめて帰路につく。

串本から天王寺までの特急列車に揺られながら、旅路を回想していた。

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走って雪山に登って走ってパンクして、今回も多くの人のお世話になってしまいながらの旅となった。

学生時代と比べると、明らかに1日で走れる距離が短くなった。

それは多分、単純に体力が落ちているからであり、一人故に仲間とのローテーションができないからでもあり、ツーリング中に立ち止まってファインダーを覗く回数が増えたからでもあるのだと思う。

紀伊半島をざっくり一周しようなどと考えていたのに縦断になってしまったし、当初予定していたルートの半分も走れていないけれど、この年末年始に走れなかった道はまたいつか走りに戻って来ればいい。

走り出してみるまで何が起こるのか分からないからおもしろい。それが自転車の旅なのだから、今回もまた良い旅だったのではないかと思う。

おわり。

年末年始紀伊半島一人旅part6

無事に釈迦ヶ岳のご来光登山を終えた翌日。

久しぶりに自転車ツアーの醍醐味を味わうこととなる。

熊野をゆく

食料が尽きお店もないので、朝食は非常食のアルファ米となった。

沸かしたお湯を入れて封をして15分、放置しておくだけでご飯のできあがり。

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アルファ米は多めに持ってきているので、何かあっても水さえあればあと1日はどうにかなる。

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道の駅の端にひっそりと張らせていただいていたテントを撤収。

今日は本州最南端の潮岬を目指す。

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静かな朝。

風が気持ちいい。

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熊野川沿いの道をゆったりと下ってゆく。

ツーリングマップルに書いてあったとおり、この国道168号は快走路だ。

世界遺産熊野本宮大社

大峯奥駈道に続き、紀伊山地の霊場と参詣道の一部として世界遺産に登録されている熊野本宮に到着。

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1月2日ということで初詣の参拝客はまだまだ多く、近くの道は渋滞していた。

参拝するにも30分以上行列に並ばなければならないほど混雑していた。

なんとか初詣を済ませおみくじを引く。

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なんともいえぬ末吉....

恋愛「あきらめなさい」

そんな決めつけなくてもいいじゃない、神様。

街へ

熊野本宮の近くには高さ34mと日本一の大鳥居があるとのこと。

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規格外に大きい。大きすぎて遠近感が分からなくなる。

記念に少しだけ写真を撮り、街へ急ぐ。

今日は頑張ればなんとか本州最南端の潮岬まで辿り着けそう。

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熊野川ブルー(勝手に名付けた)を左手に快走。

陽が射す度に川の青が更に深くなって美しい。

熊野本宮と熊野速玉を繋ぐこの流域もまた、世界遺産の一部として登録されているらしい。

川沿いを走り続け、4日ぶりに街へ出た。

自転車ツアーの醍醐味

自転車の旅は甘い汁ばかりを啜らせてはくれない。

絶景や快走路の前後には何かしらの苦難が待ち受けている(経験則)。

今回も例に漏れず、ハードモードに突入する。

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4日ぶりのコンビニにテンションが上がる。

おにぎりが美味しい。文明よありがとう...ありがとう...

潮岬に向けて、ここはひとつ気合を入れようとモンエナを1本。

エナジーをチャージしていると、旅先でよく出会う”どこから来たのおじさん”に声を掛けられた。

(説明しよう。”どこから来たのおじさん”とは、輪行準備中や休憩中に声を掛けてくる地元のおじさんのことである。第一声は勿論「どこから来たの?」)

おじさん「どこから来たの?(以下略)自転車はパンクしたりしないんか?

私「このタイヤ、余程のことがない限りパンクしないんですよ。パンクしてもチューブ持ってきてるから修理すればいいだけなので、あまり心配はしてないです。」

察しの良い方はもうお気づきだろう。

見事、フラグを建ててしまったのである。

1級フラグ建築士

フラグを建ててからまだ5kmも走っていない。

陽が傾き始めている。急がなければならない。

トンネルの先には今日の温泉がある。

トンネルは軽車両通行禁止となっており、迂回路が用意してあったので人気のない脇道へまわる。

ガタン、ガタン

何の音だろうか。多分気のせいだ。

ガタン、ガタン、ガタン

自転車がいやに騒がしいな。

ガタン ガタン ガタン ガタン

明らかに何かが挟まった音がしている。

木の枝がたくさん落ちているような道だったし、スポークの間に何か挟まってしまったのだろう。

温泉まであと100mほどのところで停止する。

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あっ...パンクしないと言ったそばから...

先ほどチャージしたばかりのエナジーは、パンク修理に注がれるんですね。

パンクしてしまったものは仕方がない。

さっさと釘を引っこ抜いてチューブを交換するのみだ。

タイヤの穴はどうにかして塞ごう。

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予想以上にでっかい釘だった。

さてさて、チューブを。

(適合しない規格のチューブを発見)

やってしまった...

チューブ持ってきてるから修理すればいいだけと言ったそばから...

何かと立て込んでいた年末はルート作成する余裕もなく、新幹線の中で旅程を決めるドタバタっぷりだった。

荷物をまとめる時にチューブの1つや2つ、間違えていても仕方がない。

(ちゃんと確認しましょう)

心配して用意周到に準備した時には何も起こらず、準備を怠った時に限ってトラブルは起きる。

人生そんなもんです。

しかし、悪夢はここで終わってはくれなかった。

ゴムのり出てこんやん

あとはタイヤパッチで穴を塞いで修理する他なかった。

しかし、ゴムのりは一向に出てこない。

なんと、最後の望みであるゴムのりは硬化していた!!!

(ちゃんと確認しましょう)

非常に困った。

近くに自転車屋さんや駅はない。

1時間かけて駅まで歩き、街まで電車で戻ったところで正月3ヶ日の夕方に自転車屋さんが店を開けている望みは薄い。

ここは工夫を凝らしてタイヤの穴を塞ぐしかなさそうだ。

手元にあるものでなんとかできないだろうか。

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ライターでパッチを炙り、チューブに溶着させる作戦

自転車乗りとして恥ずかしい限りだが、立ち止まったままでは何処へも行けないので、思いついたことはとりあえずやってみるしかない。

少し煙が出るくらいまでパッチを炙るとタイヤにくっつくようになった。

これはいけるかも。

炙って柔らかくなったパッチをライターのお尻でチューブに押し付ける。

パッチが冷めると縮んで隙間ができるので空気が漏れてしまう。

まだまだ。もう一回...もう一回...

気付いたら日はすっかり暮れて、辺りは暗くなっていた。

指は溶けたゴムで真っ黒になっていた。

長期戦になりそうだ。

とりあえず目の前の温泉に入ってから再度挑戦することにした。

願事:積極的な考え方をすれば叶う

今年の目標は本州4端踏破。

だから今回の旅では最南端の潮岬にどうしても辿り着いておきたかった。

パンク修理ができなかったら...

その時は潮岬まで30km、自転車を押し歩くしかない。

今日引いたおみくじにも「積極的な考え方をすれば叶う」と書いてあった。

諦めてやるわけにはいかない。

温泉の受付にて、近くでご飯を食べれる所を訊いたが無いとのこと。

パンクが修理できるまで晩飯は食べれそうにない。

再びパッチを炙っては押し付ける。

1時間..2時間...

馬鹿馬鹿しいけれど、手持ちのものではこの他もうどうすることもできなかった。

午後10時、気温-2℃。

ハードシェルには霜が降りていた。

寒いし心細い。こんな馬鹿馬鹿しいことを6時間程やっている。

いつまで戦えばよいのだろう。

心が折れかけているところに、電飾がついたシャコタンのバンがやってきた。

「(こんな状況でヤンキーな方に絡まれるのか...?)」

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「温泉の受付で聞いてたんですよ。晩ごはん食べてないんだろうなって。

さっき通りかかったらまだ修理やってたから。これ食べてね。」

今、人にやさしくされたら泣いちゃうぞ?

風邪気味で鼻水がずびずびだけど、目からも汁が止まらなくなっちゃうぞ?

去ってゆくバンが見えなくなるまで頭を下げていた。

悴む手と湯冷めした体に、あたたかいお茶と肉まんが沁みる。

本当にありがたかった。


その後また作業を続けたが、チューブの穴は一向に塞がらなかった。

午後11時半。

これ以上続けても体力が削られるだけだと判断し、明日は30km歩こうと決めた頃だった。

温泉の駐車場で誰かと話し込んでいた別の方に声を掛けられた。

事情を話すと彼はこう言った。

「明日暇だから、新宮の街まで連れったげるよ。温泉の人にはここの駐車場で寝ていいって許可もらってる。テントは持ってるだろうから、今日はもう寝な。明日朝から迎えにくるから。何時がいい?」

氷点下の屋外で寝ることを勧めてくるあたり、旅慣れしているか同じような経験がある方なのだろう。

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自転車はパンクしたまま。

駐車場の端の邪魔にならないところへ移動させ、テントを張った。

自分のミスで苦しみ、名も知らぬ方の優しさに助けられてしまった1日だった。

つづく。

年末年始紀伊半島一人旅part5

無事に下りきるまでが登山。

油断せずいきましょう。

銀世界

2019年の初日の出も拝めたことだし下山開始。

下山中も本当に良い景色だった。

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紀伊の山々が果てしなく続いている。

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積雪の木々の霧氷が銀世界を演出していた。

陽が高くなってくると白い雪が眩しい。

数名、これから登山するかたにも会った。

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霧氷は昨日の強風でかなり剥がれてしまっているらしい。

キャノンのフルサイズを担いで霧氷を撮りに来ていた方がそう言っていた。

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自分がつけた足脚を辿る。

時折、行動食を口に入れながら歩き続けた。

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積雪はそこそこ。

輪かんじきを携行するか悩んだけれど、深いところでも足首上くらいまでしか沈まないので持ってこなくて正解だった。

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尾根道は歩いていて本当に気持ちがいい。

見渡す限り山ばかり。

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登山というよりはお散歩コースといったところだろうか。

ちなみに上の写真右奥の丸っこいのが釈迦ヶ岳

さっきまであの頂上にいたのだ。

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立ち枯れているかのような木が多い。

どこか淋しい、最果ての地といった感じがしてとても好きな場所。

相棒のもとへ

登山口あたりまでやってきた。

まだまだ道のりは長い。

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樹林帯でふと振り返ってみる。

午前3時半頃、真っ暗な中この道を歩いていたなと思い出す。

無事に下山できそうでよかった。

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トイレ小屋まで帰ってきた。

ここからは凍結・積雪したアスファルトの上を歩く。

下山の距離はちょうど折り返しくらいだろうか。

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轍ができている。

冬季閉鎖されている筈だが、時折車も走っているようだ。

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雪解け水が再び凍ったのか、プチ氷瀑ができていた。

昨日はなかった筈なのに、景色が変わっているのはおもしろい。

登山口から歩くこと約2時間。

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やっと相棒のもとへ。

行けるとこまで

自転車に跨ったのは午後2時。

予定よりかなり押してしまったので、行けるところまで走って寝ようと考えていた。

新年早々かなり適当なプランである。

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「崖にとりあえず道作ったよ。」

くらいのワイルドさが滲み出る道が続く。

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昨日同様かなりの頻度で凍結している。

スパイクタイヤを履かせていない自転車にはつらい。

あっっっ...!!!

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ほぼ横滑りしながらなんとか転倒は免れた。

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雪が積もっているほうがまだ走りやすい。

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林道の始点あたりまで帰ってきた。

雪はもうない。

ずっと奥の右肩下がりの尾根のピークがおそらく釈迦ヶ岳

遥か彼方だ。

温泉やテントを張る場所を考えると、今日は十津川村の道の駅あたりを目的地とするのが無難だった。

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道中見つけた吊り橋に寄り道したりしながら、山間を走り続けた。

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温泉に辿り着いたのは陽がすっかり暮れたあとだった。

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今夜は道の駅泊。

数件ある村のお店は元日で休業。

おせちを食べることは叶わなかった。

食料があと少しで尽きそう。

早く街に出なければ。

つづく。