せたログ

主に自転車の旅について,不定期投稿します

国東半島一周旅day01

「なんでもない週末に旅しよう」

そう思い立ったのが3月の上旬、冬の寒さが和らぎ微かに春の気配を感じる頃だった。

なるべく気負わず気楽に出発したい。それならば九州内だろう。どこにしようか。

なんとなく探しているとこのWebサイトを発見した。

kunisakicycle.jp

大分県の国東半島にサイクリングルートができたらしい。

過去に九州一周した時にはショートカットして通らなかった国東半島。

よし、桜が咲いたら走りに行こう。

国東半島へ

4月最初の土曜日、午前5時。

佐賀から高速をとばして大分を目指す。

ルーフキャリア初導入で心配はあったが杞憂だった。

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たった2時間でスタート地点に到着。近場は楽だ。

今回は自動車輪行のため、スタートとゴールを同じ場所にする必要があった。

あらかじめサーチしていた高台の展望台に車を停め自転車の準備をする。

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朝イチから絶景!

由布岳が美しい。早起きは3文の得とはまさにこのこと。

坂を少し下ると国東半島のサイクリングルート「仁王輪道」の半島一周コース(全長約140km)に合流する。

この半島一周コースを2日かけてゆったりと走る計画だ。

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早速、仁王像が出迎えてくれた。強そう。

仁王輪道の名は、半島内に300体以上ある石造仁王像にちなんで名づけられたらしい。

2日間で何体くらい見れるだろうか。

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山間を抜け、豊後高田市街に入る。

レトロなお店が立ち並ぶ商店街「昭和の町」で見つけた喫茶店伯剌西爾(ブラジル)珈琲にぶらりと立ち寄り、早めのお昼をとる。

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マスターは気さくな方で、西欧の珍しいグラスをいくつも見せてくれた。

真上から見ると万華鏡のように見えるこのグラスは7万円もするらしい。

そのうえ「好きなグラス選んで、ジュース注ぎますから」とまで言ってくれた。

ギターの生演奏に「りんごの唄」をリクエストし昭和の旋律を楽しみながら、ぶどうジュースをいただく。

ああ、美味しい。そして昔祖母がよく歌っていた懐かしの旋律が心地よい。

自転車旅をしているのにこのゆったり感はなんだ...

自分を追い込むような旅ばかりやってると寿命が縮むので、たまにはこういうのやっても罰はあたらないでしょう。

春の赤青黄

海沿いに出る。ここからはシーサイドツーリング。

全身で春を味わうことになる。

:真珠海岸、消防団

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:粟島公園、菜の花畑

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:粟島公園、鳥居と桜

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国東半島がこんなにカラフルだなんて。侮っていた。

この景色、すべて約1時間の間に目にしたもの。絶景が凝縮されている。

真珠海岸・粟島神社を満喫したら長崎鼻に寄り道。

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道路の両側に広がる菜の花畑に圧倒される。

時間が経つのも忘れて夢中でシャッターを切っていた。

宿へ

1日に70kmのライトプランなだけに疲れが見える前に目的地に到着。

旅館にチェックインしたけれど、まだ日も高い。

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道の駅くにみまで少しだけ足をのばし、大分産のかぼすジュースを楽しむ。

ご当地ジュースは必ず嗜むのがポリシー。

ひとしきりあてもなく近辺をぶらぶらして宿へ戻る。

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くず

案内された部屋名にディスられた気がした、つらい。

自転車の旅といえば道の駅にテントが8割くらいのイメージだから、畳の部屋で横になれるだけで幸せすぎて昇天。

しかもまだ明るい時間帯に。贅沢すぎる。

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夕食は懐石料理と地酒に舌鼓。

国東半島、いいぞ。(就寝)

day02につづく

年末年始紀伊半島一人旅part7

パンクのフラグを見事回収し、チューブを交換することもパッチで穴を塞ぐこともできないまま朝がきた。

山から下りてきた筈なのに-2℃の朝。

ここは温泉の駐車場。かなり冷え込んでいる。

自転車とテントにはしっかりと霜がおりていた。

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目の前の湖からは湯気があがっていた。

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テントを片付け

「明日朝迎えに来るから」と言ってくれたおっちゃんを待つ。

今夜どこに辿り着けるのか見当もつかない。

おっちゃんと白バン

朝7時きっかりにおっちゃんは駐車場へやってきた。

「これ、朝飯」という言葉とともにサンドイッチとコーヒーが手渡される。

何から何まで良くしてもらって申し訳ない。

でっかい白バンに自転車と荷物を積み込む。

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バンには大量の荷物が積まれていた。

新宮市方面へ戻りながら自転車屋を探す。

まだ1月3日の朝。

どの店も開いてはいなかった。

定住せずに国内外で自営業をやっていたという彼の話をききながら車はゆく。

いろんなことをやってみて、飽きたら全く別のことをやって生計を立てているらしい。

若いころは海外、ここ10年はみかん農家、そろそろルーチン化して飽きてきたので次は釣りだという。

サラリーマンも悪くはないけど、こういう生き方も魅力的だ。(やるとは言っていない)

いろんな人がいておもしろい。

・・・

適合するタイヤもチューブも置いている店がなかったので、イオンの自転車屋でパンク修理キットを購入。

タイヤに空いた穴は、ガムテープをタイヤパッチ代わりにして塞ぐことにした。

ガムテープもイオンで購入しようとすると彼に止められた。

「このあと会う釣り仲間でガムテープに強いこだわりあるのがいるから。オカモトの高級ガムテープくれるはずだよ。」

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オカモトといえばゴムのオカモト。

安心と信頼のオカモト。

ガムテープも作っているとは知らなかった。

穴が開くことはないはず。

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これで大丈夫だろう。

チューブの穴もパッチで塞いで自転車は見事復活。

修理したタイヤとチューブを負荷がかかりにくい前輪に移し替えて作業完了。

お世話になったおっちゃんが釣りに行くのを見送り、潮岬に向けて出発する。

ラストランは2人で

昼食をとり、再び走り始める。

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捕鯨云々で話題となった太地町を抜け、本州最南端町串本に入る。

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だんだんと最果て感がでてきた。

端っこ好きには堪らない。

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道中で別の旅人と出会った。

台湾人のサラリーマンの方で、長期休暇に一人でツーリングしているとのことだった。

なんとなく同じ匂いがする。

「一緒に走ろう」と声を掛けられたので、潮岬まで一緒に行くことにした。

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彼は基本ゲストハウス泊らしく、かなり身軽だ。

坂道ではどんどん離されてしまう。

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片や私は、パンパンのサイドバッグにシュラフバックパックにとてんこ盛りだ。

あとからLINEで送られてきた後ろ姿の大荷物っぷりが笑えた。

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潮岬到着。一人旅のゴールは二人で。

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本州最南端から夕陽を眺める。

台湾の彼は市街のゲストハウスへ行くらしく、ここでお別れとなった。

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私は今夜の流星群に期待して、潮岬でキャンプすることにした。

潮岬、しぶんぎ座流星群の夜

戦利品のステッカーと到達証明書を入手できて満足。

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今夜はしぶんぎ座流星群極大。

快晴かつ月明りもなく、観測日和。

先の旅人から「ゲストハウスに泊まりにおいでよ」とLINEがあったが、こんな日に外で寝ないのは勿体ないからと断ってしまった。

星景写真撮影に備えて、さっさとテントを張る。

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1時間ほどシャッターを切り続けたがなかなか流れない。

朝方の方がよく流れるとの情報だったので、一旦寝ることに。

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朝の3時頃に起床し、真っ暗な潮岬周辺をカメラ片手に彷徨う。

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地球照を纏った細い月がのぼってきた。

気まぐれに場所を変えながらシャッターを切る。

数は少なかったけれど、流星を捉えることができた。

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旅の終わり

夜があけてゆく。

あっという間の6日間だった。

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細い月が白んだ空へ溶けてゆくと、あとを追うように日が昇り、新しい1日が始まった。

荷物をまとめて帰路につく。

串本から天王寺までの特急列車に揺られながら、旅路を回想していた。

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走って雪山に登って走ってパンクして、今回も多くの人のお世話になってしまいながらの旅となった。

学生時代と比べると、明らかに1日で走れる距離が短くなった。

それは多分、単純に体力が落ちているからであり、一人故に仲間とのローテーションができないからでもあり、ツーリング中に立ち止まってファインダーを覗く回数が増えたからでもあるのだと思う。

紀伊半島をざっくり一周しようなどと考えていたのに縦断になってしまったし、当初予定していたルートの半分も走れていないけれど、この年末年始に走れなかった道はまたいつか走りに戻って来ればいい。

走り出してみるまで何が起こるのか分からないからおもしろい。それが自転車の旅なのだから、今回もまた良い旅だったのではないかと思う。

おわり。

年末年始紀伊半島一人旅part6

無事に釈迦ヶ岳のご来光登山を終えた翌日。

久しぶりに自転車ツアーの醍醐味を味わうこととなる。

熊野をゆく

食料が尽きお店もないので、朝食は非常食のアルファ米となった。

沸かしたお湯を入れて封をして15分、放置しておくだけでご飯のできあがり。

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アルファ米は多めに持ってきているので、何かあっても水さえあればあと1日はどうにかなる。

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道の駅の端にひっそりと張らせていただいていたテントを撤収。

今日は本州最南端の潮岬を目指す。

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静かな朝。

風が気持ちいい。

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熊野川沿いの道をゆったりと下ってゆく。

ツーリングマップルに書いてあったとおり、この国道168号は快走路だ。

世界遺産熊野本宮大社

大峯奥駈道に続き、紀伊山地の霊場と参詣道の一部として世界遺産に登録されている熊野本宮に到着。

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1月2日ということで初詣の参拝客はまだまだ多く、近くの道は渋滞していた。

参拝するにも30分以上行列に並ばなければならないほど混雑していた。

なんとか初詣を済ませおみくじを引く。

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なんともいえぬ末吉....

恋愛「あきらめなさい」

そんな決めつけなくてもいいじゃない、神様。

街へ

熊野本宮の近くには高さ34mと日本一の大鳥居があるとのこと。

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規格外に大きい。大きすぎて遠近感が分からなくなる。

記念に少しだけ写真を撮り、街へ急ぐ。

今日は頑張ればなんとか本州最南端の潮岬まで辿り着けそう。

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熊野川ブルー(勝手に名付けた)を左手に快走。

陽が射す度に川の青が更に深くなって美しい。

熊野本宮と熊野速玉を繋ぐこの流域もまた、世界遺産の一部として登録されているらしい。

川沿いを走り続け、4日ぶりに街へ出た。

自転車ツアーの醍醐味

自転車の旅は甘い汁ばかりを啜らせてはくれない。

絶景や快走路の前後には何かしらの苦難が待ち受けている(経験則)。

今回も例に漏れず、ハードモードに突入する。

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4日ぶりのコンビニにテンションが上がる。

おにぎりが美味しい。文明よありがとう...ありがとう...

潮岬に向けて、ここはひとつ気合を入れようとモンエナを1本。

エナジーをチャージしていると、旅先でよく出会う”どこから来たのおじさん”に声を掛けられた。

(説明しよう。”どこから来たのおじさん”とは、輪行準備中や休憩中に声を掛けてくる地元のおじさんのことである。第一声は勿論「どこから来たの?」)

おじさん「どこから来たの?(以下略)自転車はパンクしたりしないんか?

私「このタイヤ、余程のことがない限りパンクしないんですよ。パンクしてもチューブ持ってきてるから修理すればいいだけなので、あまり心配はしてないです。」

察しの良い方はもうお気づきだろう。

見事、フラグを建ててしまったのである。

1級フラグ建築士

フラグを建ててからまだ5kmも走っていない。

陽が傾き始めている。急がなければならない。

トンネルの先には今日の温泉がある。

トンネルは軽車両通行禁止となっており、迂回路が用意してあったので人気のない脇道へまわる。

ガタン、ガタン

何の音だろうか。多分気のせいだ。

ガタン、ガタン、ガタン

自転車がいやに騒がしいな。

ガタン ガタン ガタン ガタン

明らかに何かが挟まった音がしている。

木の枝がたくさん落ちているような道だったし、スポークの間に何か挟まってしまったのだろう。

温泉まであと100mほどのところで停止する。

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あっ...パンクしないと言ったそばから...

先ほどチャージしたばかりのエナジーは、パンク修理に注がれるんですね。

パンクしてしまったものは仕方がない。

さっさと釘を引っこ抜いてチューブを交換するのみだ。

タイヤの穴はどうにかして塞ごう。

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予想以上にでっかい釘だった。

さてさて、チューブを。

(適合しない規格のチューブを発見)

やってしまった...

チューブ持ってきてるから修理すればいいだけと言ったそばから...

何かと立て込んでいた年末はルート作成する余裕もなく、新幹線の中で旅程を決めるドタバタっぷりだった。

荷物をまとめる時にチューブの1つや2つ、間違えていても仕方がない。

(ちゃんと確認しましょう)

心配して用意周到に準備した時には何も起こらず、準備を怠った時に限ってトラブルは起きる。

人生そんなもんです。

しかし、悪夢はここで終わってはくれなかった。

ゴムのり出てこんやん

あとはタイヤパッチで穴を塞いで修理する他なかった。

しかし、ゴムのりは一向に出てこない。

なんと、最後の望みであるゴムのりは硬化していた!!!

(ちゃんと確認しましょう)

非常に困った。

近くに自転車屋さんや駅はない。

1時間かけて駅まで歩き、街まで電車で戻ったところで正月3ヶ日の夕方に自転車屋さんが店を開けている望みは薄い。

ここは工夫を凝らしてタイヤの穴を塞ぐしかなさそうだ。

手元にあるものでなんとかできないだろうか。

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ライターでパッチを炙り、チューブに溶着させる作戦

自転車乗りとして恥ずかしい限りだが、立ち止まったままでは何処へも行けないので、思いついたことはとりあえずやってみるしかない。

少し煙が出るくらいまでパッチを炙るとタイヤにくっつくようになった。

これはいけるかも。

炙って柔らかくなったパッチをライターのお尻でチューブに押し付ける。

パッチが冷めると縮んで隙間ができるので空気が漏れてしまう。

まだまだ。もう一回...もう一回...

気付いたら日はすっかり暮れて、辺りは暗くなっていた。

指は溶けたゴムで真っ黒になっていた。

長期戦になりそうだ。

とりあえず目の前の温泉に入ってから再度挑戦することにした。

願事:積極的な考え方をすれば叶う

今年の目標は本州4端踏破。

だから今回の旅では最南端の潮岬にどうしても辿り着いておきたかった。

パンク修理ができなかったら...

その時は潮岬まで30km、自転車を押し歩くしかない。

今日引いたおみくじにも「積極的な考え方をすれば叶う」と書いてあった。

諦めてやるわけにはいかない。

温泉の受付にて、近くでご飯を食べれる所を訊いたが無いとのこと。

パンクが修理できるまで晩飯は食べれそうにない。

再びパッチを炙っては押し付ける。

1時間..2時間...

馬鹿馬鹿しいけれど、手持ちのものではこの他もうどうすることもできなかった。

午後10時、気温-2℃。

ハードシェルには霜が降りていた。

寒いし心細い。こんな馬鹿馬鹿しいことを6時間程やっている。

いつまで戦えばよいのだろう。

心が折れかけているところに、電飾がついたシャコタンのバンがやってきた。

「(こんな状況でヤンキーな方に絡まれるのか...?)」

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「温泉の受付で聞いてたんですよ。晩ごはん食べてないんだろうなって。

さっき通りかかったらまだ修理やってたから。これ食べてね。」

今、人にやさしくされたら泣いちゃうぞ?

風邪気味で鼻水がずびずびだけど、目からも汁が止まらなくなっちゃうぞ?

去ってゆくバンが見えなくなるまで頭を下げていた。

悴む手と湯冷めした体に、あたたかいお茶と肉まんが沁みる。

本当にありがたかった。


その後また作業を続けたが、チューブの穴は一向に塞がらなかった。

午後11時半。

これ以上続けても体力が削られるだけだと判断し、明日は30km歩こうと決めた頃だった。

温泉の駐車場で誰かと話し込んでいた別の方に声を掛けられた。

事情を話すと彼はこう言った。

「明日暇だから、新宮の街まで連れったげるよ。温泉の人にはここの駐車場で寝ていいって許可もらってる。テントは持ってるだろうから、今日はもう寝な。明日朝から迎えにくるから。何時がいい?」

氷点下の屋外で寝ることを勧めてくるあたり、旅慣れしているか同じような経験がある方なのだろう。

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自転車はパンクしたまま。

駐車場の端の邪魔にならないところへ移動させ、テントを張った。

自分のミスで苦しみ、名も知らぬ方の優しさに助けられてしまった1日だった。

つづく。

年末年始紀伊半島一人旅part5

無事に下りきるまでが登山。

油断せずいきましょう。

銀世界

2019年の初日の出も拝めたことだし下山開始。

下山中も本当に良い景色だった。

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紀伊の山々が果てしなく続いている。

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積雪の木々の霧氷が銀世界を演出していた。

陽が高くなってくると白い雪が眩しい。

数名、これから登山するかたにも会った。

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霧氷は昨日の強風でかなり剥がれてしまっているらしい。

キャノンのフルサイズを担いで霧氷を撮りに来ていた方がそう言っていた。

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自分がつけた足脚を辿る。

時折、行動食を口に入れながら歩き続けた。

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積雪はそこそこ。

輪かんじきを携行するか悩んだけれど、深いところでも足首上くらいまでしか沈まないので持ってこなくて正解だった。

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尾根道は歩いていて本当に気持ちがいい。

見渡す限り山ばかり。

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登山というよりはお散歩コースといったところだろうか。

ちなみに上の写真右奥の丸っこいのが釈迦ヶ岳

さっきまであの頂上にいたのだ。

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立ち枯れているかのような木が多い。

どこか淋しい、最果ての地といった感じがしてとても好きな場所。

相棒のもとへ

登山口あたりまでやってきた。

まだまだ道のりは長い。

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樹林帯でふと振り返ってみる。

午前3時半頃、真っ暗な中この道を歩いていたなと思い出す。

無事に下山できそうでよかった。

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トイレ小屋まで帰ってきた。

ここからは凍結・積雪したアスファルトの上を歩く。

下山の距離はちょうど折り返しくらいだろうか。

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轍ができている。

冬季閉鎖されている筈だが、時折車も走っているようだ。

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雪解け水が再び凍ったのか、プチ氷瀑ができていた。

昨日はなかった筈なのに、景色が変わっているのはおもしろい。

登山口から歩くこと約2時間。

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やっと相棒のもとへ。

行けるとこまで

自転車に跨ったのは午後2時。

予定よりかなり押してしまったので、行けるところまで走って寝ようと考えていた。

新年早々かなり適当なプランである。

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「崖にとりあえず道作ったよ。」

くらいのワイルドさが滲み出る道が続く。

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昨日同様かなりの頻度で凍結している。

スパイクタイヤを履かせていない自転車にはつらい。

あっっっ...!!!

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ほぼ横滑りしながらなんとか転倒は免れた。

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雪が積もっているほうがまだ走りやすい。

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林道の始点あたりまで帰ってきた。

雪はもうない。

ずっと奥の右肩下がりの尾根のピークがおそらく釈迦ヶ岳

遥か彼方だ。

温泉やテントを張る場所を考えると、今日は十津川村の道の駅あたりを目的地とするのが無難だった。

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道中見つけた吊り橋に寄り道したりしながら、山間を走り続けた。

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温泉に辿り着いたのは陽がすっかり暮れたあとだった。

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今夜は道の駅泊。

数件ある村のお店は元日で休業。

おせちを食べることは叶わなかった。

食料があと少しで尽きそう。

早く街に出なければ。

つづく。

年末年始紀伊半島一人旅part4

2019年1月1日午前1時半。

シュラフの中で目を覚ました時には

既に新しい一年が始まっていた。

標高1300m、テント内は-5℃。

辺りは真っ暗、携行していたランタンが夜闇をうっすらと照らしてくれる。

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夕方に吹き荒れていた風は止み、空には星が煌めいていた。

誰もいない、電波も入らない深夜の峠で、ひっそりと活動を始めた。

夜の雪山へ

寒さで点火してくれないガス缶をシュラフ懐炉で必死に温めて湯を沸かし、食事をとった。

冬季閉鎖中のトイレ小屋に張っていたテントを畳み

アイゼンを装着してザックを背負って出発したのは、午前3時半頃だった。

目指すは釈迦ヶ岳頂上。

お釈迦様の像と美しいご来光が待っている筈。多分。きっと。

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夜の雪山は怖い。

単純に夜山に一人というのが心細いというのはあるが

それ以上に道迷いや滑落による遭難を心配していた。

それと、恐らく冬眠中で出てこないとは思うけれど熊もちょっと怖かった。

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ある程度トレースがついていたのでそれを辿って登った。

風雪でトレースが消えている箇所は、こまめに来た道を戻って確認した。

電波は一切入らなかったが、予め入れておいたオフラインマップとスマホGPS

自身の位置がルート上にあることを確認できるYAMAPアプリには助けられた。

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ピッケルは携行していなかったが、急坂がそれほどない道だったのでストックで十分事足りた。

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東からのぼりはじめた月の方角をたよりに歩き続ける。

稜線に出ると、木々はまばらになり空が広くなった。

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空には星がきらきらと輝き、時折流星も見えた。

足元の雪もヘッドライトに照らされてきらきらと光っていた。

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朝が近づくにつれて気温が下がってゆく。

温度計は-10℃を指していた。

ご来光

午前6時半、空が紅くなってきた。

明るくなってくると随分と安心感が違う。

頂上付近の斜面は一段と雪を蓄えている。

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日の出の時刻10分前にお釈迦様が見えた。

なんとか間に合ったらしい。

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元旦の誰も居ない静かな山頂を独り占めできる贅沢。

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誰もやってこないような時間の誰もやってこないような場所。

人が多い場所は落ち着かなくて嫌いだから

こんな山奥に逃げてきたのかもしれない。

などと考えながら、朝日が昇るのを待った。

世界中から人がいなくなったのではと錯覚してしまうほどに

孤独で静かで幸せな時間が過ぎてゆく。

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あけましておめでとうございます。

釈迦ヶ岳山頂

快晴の釈迦ヶ岳山頂、非常に景色がいい。

一等三角点として登録されているだけはある。

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朝日を背に、釈迦ヶ岳の大きな影が紀伊山地の山々に覆いかぶさっていた。

よくも自転車と自分の脚だけで大阪からここまで登ってきたものだと思う。

標高1800mと他大多数の山々より頭一つ高いこの山頂からは紀伊山地が一望できる。

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近畿地方最高峰の八経ヶ岳が目の前に。

あちら側はもっと雪深そう。

日本百名山に登録されており、山体を見て登りたくなってしまったが、ぐっと堪えて写真だけ撮っておく。

登るのはまたの機会に。

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ここは世界遺産大峯奥駈道の一部。

釈迦如来像の周りに散りばめられたお札たちが

ここが修験道の修行場であったことを彷彿させる。

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釈迦如来像にはエビのしっぽがついていた。

この大きな銅像大正13年、鬼マサという一人の強力によって担ぎ上げられたという。

鬼マサ、強すぎる。名前負けしていない。

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写真はたくさん撮れたし、体も冷え始めたので下山を始めることにした。

つづく。

年末年始紀伊半島一人旅part3

初日の夜、温泉のオーナーであるOさんに拾われた。

Oさんは笑顔で

「お前みたいなのは嫌いじゃ」

と何度も云いながら、たくさん身の上話をしてくれた。

私は餅とカニ缶を入れたラーメンとビールまでいただいてしまい、温かい布団で眠ったのだった。

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山深くへ

12月31日、大晦日の朝。午前6時に起床。

Oさん宅にて納豆パンと珈琲をいただき出発した。

本当にお世話になりました。

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山深い場所なのでところどころに路面凍結や積雪があった。

道の駅大塔併設の温泉で特別に朝風呂を浴びさせていただき、体を温めて山間部を快走する。

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林道に入ると、一切車を見なくなった。

目指すは標高1300mの釈迦ヶ岳尾登山口。

斜度が急にきつくなり、ペースが上がらない。

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人気のない静かな山道を登りながら

「年が暮れてゆくなあ」と感じていた。

人里離れた場所でひっそりと年を越すのは初めてだ。

このあたりから一切電波が入らなくなった。

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熊出没注意の看板のアピールが激しい。

無駄にビビらせてくる。

熊のいない九州に住んでいる身としては

こういうのは非常に刺激的で良い(良くない)

...

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!!!

通行止め...3日前からじゃないか...

絶妙なタイミングで林道の行く先が冬期通行止めとなり、バリケードが施してあった。

行くか戻るか。

道路標識はないし県警の文字が見当たらないので、法律の縛りがあるわけではなさそう。

「この先で起きた事故に関しては一切の責任を負いません」

と書いてあるということは

それなりに危険な箇所があるから通行止めにしているのだろう。

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冒険のはじまり

勿論戻るなどという選択肢はなく、バリケードの脇からそっと回り込んで先を目指すことにした。

ここからはわざわざ危険を冒しに行くようなもの。

文字通り冒険、全て自己責任となる。

細心の注意を払って進まなければならないし、トラブルに見舞われたら即座に撤退の判断をしなければならない。

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次第に雪が深くなり、路面の凍結もひどくなってゆく。

熊は冬眠中のはずだが、念のためラジオを流しながらペダルを回した。

誰もいない。背中のラジオと風の音だけが鼓膜を揺らす午後。

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朝からお店というお店を見ていない。

昨日大量に食料を買い込んでおいて正解だった。

凍りかけのおにぎりを食べつつ、さらに進んだ。

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急な斜面に氷が張っている箇所はタチが悪い。

傾いたスケートリンクのようなもので、そもそも自転車には乗っていられないし、気を抜けば転倒しそのまま滑り落ちるだろう。

(重いけれどスパイクタイヤも持ってくればよかった?)

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だから氷結した路面で立ち往生したら、とにかく踏ん張るしかなかった。

そして転ばないようバランスを取りながら、摺り足でちょっとずつ前へ進む。

楽しい。ドキドキする。

緊張感は心地よいけれど、ペースが全く上がらない。

崖側のガードレールもまばらな山道がこんなに凍結してくれたのでは、通行止めにするのも頷ける。

これ以上先へ自転車で行くのは現実的ではないと判断したのは、標高800mあたりだった。

さらば相棒

自転車を押し歩かなければ進めないような急坂の凍結路が増えてきたので、登山口まで自転車で行く当初のプランは断念した。

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テントやシュラフ、食料を背負って歩く。

ここからは歩いたほうがきっと速いし、安全だ。

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登山のために持ってきていたアイゼンを装着した。

まさかここで使うことになるとは思っていなかったが、凍結した路面を噛んでくれるので歩きやすくなるはず。

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待っててね。

ここまで連れてきてくれた相棒に別れを告げて更に上へ。

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非常に歩きやすくなった。

釈迦ヶ岳登山口へ

道中、1名だけ山から徒歩で下ってくる方がいた。

風が強かったので登頂はしていないとのことだったが

ここらの山々をトレッキングしていたらしい。

「まさか人に出会うとは思ってなかった」

と言われた。

こっちの台詞だ。

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そんなこんなしている間に登山口が近づいてきた。

日が暮れるまでにぎりぎり辿り着けるだろうか。

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重く垂れこめた雲はどことなく湿っぽさを醸し出しながら、紀伊の山々を覆っていた。

時折雲間から覗く太陽が辺りを黄色く染める度に、少しだけ安心した気持になっていた。

2つの足と2つのストックで歩き続ける。

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あれが釈迦ヶ岳だろうか。

標高1300mの登山口に辿り着いたのは、日が暮れる15分程前だった。

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風が非常に強く、明日の登山が心配になる。

雲の流れは速い。けれど雲量は少しずつ減っているようにも思える。

登れるかどうかは年が明けてみなければわからない。

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夕陽に照らされたシュカブラが美しい。

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この年最後の夕陽が沈んでゆく。

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この階段を上がった先はすぐに登山道。

明日夜明け前の真っ暗な中を一人で歩くことになるだろう。

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風が吹き荒れ、とても一人でテントを設営できる状態ではないので、冬季閉鎖中のトイレ小屋の入口スペースをお借りすることにした。

気温は-5℃だが、直接風を受けるよりは幾分か暖かい。

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年越しそばならぬ年越しカレー麺を食べていよいよ年越し。

誰もいない山奥での孤独な年越し。

本当に一人になれた夜はこれが初めてかもしれない。

冬の北海道でも基本的にスマホは繋がっていたし、寝床から少なくとも5km圏内には人が住んでいた。

対して今は20-30kmほど麓へ下らなければ家はないし、ずっとスマホは圏外のまま。

安全と引き換えに、何にも縛られない自由の中に横たわる権利を手にした。

誰からも見えないところに自分がいるのだと思うと気持ちが軽かった。

太い動脈あたりに懐炉を貼り付けシュラフに潜り込むと、走り疲れ歩き疲れのせいかあっという間に瞼が重くなった。

つづく。

年末年始紀伊半島一人旅part2

今回の旅の最大の目的は釈迦ヶ岳のご来光登山と本州最南端の潮岬。

絶対に譲れないのはその二か所で、その他行けそうであれば獅子岩伊勢神宮あたりも考えていた。

年末になかなか時間がとれなかったため、ルートは昨日の新幹線の中で雑に引いた。

まずは奈良県の山奥を目指して自転車を進めることにする。

大阪~五條

12月30日朝、大阪の通天閣を出発地点とすることにした。

紀伊半島をざっくり1周走ってゴールの通天閣に戻ってこようと意気込んでいた。

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トラブルに見舞われたため残念ながら全行程を予定通りにこなすことは叶わなかったが

それはまだ後のお話。

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せっせとペダルを回しプチ峠を越えて、和歌山県橋本市に入る。

朝の青空は姿を隠し、どんよりと曇ってきた。

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麺や・えんにてゆずごまラーメン。

ここは変わり種ラーメンが多く、チョイスに迷った。

ゆずのすっきりとした香りがラーメンのこってり感を和らげて美味。

下り坂で冷えた体を温めることができた。

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奈良県へ。

紀伊半島の内陸部へ向かっているため、坂ばかり。

冬期登山の装備を積載し、ザックにもストックやらアイゼンやらを詰め込んでいて重いので

少しずつ疲労がたまってゆく。

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雪山用のインナーグローブを片方失くしていたので、五條のモンベルショップへ。

街中だけではなくモンベルは山の麓にもお店を出しているので好感がもてる。

出先で忘れ物をしても、なんとかなってしまう。

登山予定の釈迦ヶ岳について店員さんに話をきくと、そこそこに雪が積もっているとのこと。

こわいと思う反面、雪景色に期待が高まる。

紀伊山地

いよいよ五條を離れ、本格的な山道に入る。

予定より少し遅れて、市街を離れたのは日が傾き始めたころだった。

山道最後のコンビニであるファミリーマートにて

余裕をもって4日分の食料や水分を確保し

ザックやサイドバックに詰めて坂道を登ってゆく。

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寒気のせいか標高が高くなっているせいか、外気温は0度近くと寒くなっているが

大荷物を積んで坂を登っているため、だんだん薄着になってゆく。

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山道なので、厭になるほどトンネルが多い。

今日の目的地は道の駅。

標高700mあたりにある寝床を目指して

無心でペダルを回していた。

夜の山道

気がついたときには夜だった。

まだ6時そこらではあるが、辺りは真っ暗になっていた。

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車もまばらな山道に、時折猿の鳴き声がキイキイと響いていた。

次第に右膝に違和感を覚え始めた。

延々と終わらない急坂、大量の食料・登山装備。

久しぶりの自転車旅に、体は情けなくも軋んでいた。

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「はやくしなければ温泉が閉まってしまう」

そう思って焦ってペダルを踏み込んだのがいけなかった。

右膝に激痛が走り、暫くは自転車を押し歩いて坂を登ることになった。

真っ暗な寂しい山道と、まともに進めない自分。

どうしようもない無力感と孤独が襲い掛かってきた。

西吉野桜温泉

「もうお湯抜いちまったよ。ごめんな。」

やっとの思いで辿り着いた温泉は、年末年始の短縮営業のため

Googleが示していたのより2時間も早く店じまいをしていた。

旅の醍醐味である温泉に期待を寄せていただけに、かなりショックだった。

街灯すらない急な坂道を今夜これ以上登るのは

体力的にも精神的にも限界だった。

温泉の方に「ここの駐車場にテント張って一泊してもいいですか?」

と許可をとった。

星がきれいだった。

「野宿か。今夜は冷えるぞ。うちに来るか?」

温泉のオーナーの方が、そう言った。

厳冬期北海道初日の記憶がデジャヴする。

seita.hatenablog.jp

また、拾われてしまった。

つづく。